経尿道的ツリウムレーザー前立腺蒸散術(ThuVAP)

前立腺肥大症の最新治療法 ツリウムレーザーについて

前立腺肥大症の最新治療法 ツリウムレーザーは平均4~5 日の入院期間です。
2014 年に導入したレーザーを用いた前立腺蒸散術(PVP)は、2019 年 6 月に 大阪府下で最初の最新治療機器である ツリウムレーザー(Quanta Cyber TM)を 導入しました。このツリウムレーザー治療はヨーロッパ泌尿器科学会のガイド ラインでも推奨されている治療法です。ツリウムレーザー治療は現行の低侵襲 治療よりもさらに術中術後の痛み・浮腫(むくみ)が少なく、合併症がより少ないことが特徴です。
ツリウムレーザー(Quanta Cyber TM)は現在、国内39施設で導入されており、当院を事務局として、前立腺ツリウムレーザー蒸散術の有用性安全性に関する多施設共同研究も行っております。
臨床研究: 200W Cyber TMを用いた経尿道的ツリウムレーザー前立腺蒸散術(ThuVAP)の有用性と安全性に関する多施設共同前向き研究(CS-ThuVAP)
 (泌尿器外科 2023年11月号掲載予定)

ツリウムレーザーの特徴

手術経過

本機器は水に対する吸収率が高く、手術開始時から終了時まで蒸散効率が低下せず一定に保たれる特長があります。(手術時間は1~2時間ですが前立腺の大きさによって変わります)
手術後、平均1日でバルーンカテーテルが抜去できることも特徴の一つです。
経過によっては、追加治療や投薬を行い、排尿が安定するまでしばらくの間、経過を見ることがあります。

安全性

軟部組織を迅速に焼灼/切断することができ、レーザー光の組織への深達度が 0.1-0.2mmと浅いため、まわりの組織に対する影響が少なく安全で、術中および術後の出血リスクが低く、抗血栓療法中(血液サラサラ薬内服中)の方にも行なうことができます。

有効性

最高出力 200W の高出力、かつ長時間連続使用できる ことから、大きな前立腺肥大症にも有効で術後合併症の発生率が低いことが報告されており、治療適応の幅が拡大しています
一般的には、前立腺体積が80~100ml以上の肥大症について推奨されている手術は、前立腺核出術(開腹手術、HoLEP、TUEBなど)と言われる術式ですが、これらの手術は周術期に輸血を行うリスクがあります(2~12%程度)。
当院では、現在までに100例以上の前立腺体積100ml以上の大きな肥大症に対してツリウムレーザー蒸散術(ThuVAP)を施行し、核出術と同等の治療効果を認めつつ、周術期に輸血を必要とした症例は認めませんでした。

ThuVAPは、安全性と有効性を非常に高いレベルで両立できる前立腺肥大症蒸散手術であると考えています。

臨床研究: 当院における200W Cyber TMを用いた経尿道的ツリウムレーザー前立腺蒸散術(ThuVAP)の治療成績の詳細はこちらよりご覧ください。

臨床研究 :More efficient vaporization by the 200-W Thulium laser system than by the GreenLight high performance system (HPS) 120-W system  Masatake Shinoharaの詳細はこちらよりご覧ください。

Graphic abstractの詳細はこちらよりご覧ください。

治療の流れ

手術後のバルーンカテーテルが抜去可能となるまでの入院期間(4~5日間)で行います。

入院

入院翌日が手術になりますので、前日から入院し手術に備えます。

手術

手術前に麻酔を行うためあまり痛みはありません。尿道に膀胱鏡を挿入し、ツリウムレーザー前立腺蒸散手術を行います。 手術は約60~120分後に終了し、尿道にカテーテルを挿入して尿道の確保を行います。

術後の経過観察

入院中、痛みや尿の状況を確認、細菌感染の有無など観察します。 術後1-2日目でカテーテルが抜去できる状況となれば、カテーテル抜去し、排尿状態を確認します。排尿に問題なければ退院とし、排尿困難が遷延するようであれば、バルーン再留置とします。退院2週間~1カ月後に外来を受診していただき、退院後の状況を確認します。

再発時の対応

再発率は非常に低いものの、ゼロではありません。前立腺肥大症の再発で排尿困難となった場合は、再手術、薬物治療、他の手術治療など状況に合わせて選択します。

術後の経過
手術後2週間~1か月程度は術前の膀胱機能の影響や手術による影響で頻尿や排尿時の違和感などが出現することがあります。徐々に膀胱機能の回復、手術後の傷の治癒が進み治療効果が現れるようになります
カテーテルを抜去しても尿が出にくい状態の時にはカテーテルを再留置して1週間程度経過を見る場合があります。
術前に尿閉(尿が全く出ない状態)で尿道カテーテルを留置していた患者さんや自己導尿をしていた患者さんでは、術後もしばらくの期間、尿道カテーテルの留置や自己導尿が必要となる場合があります。外来で経過観察しながらカテーテルの抜去、自己導尿の離脱を検討します。

経尿道的ツリウムレーザー前立腺蒸散術(ThuVAP)の合併症

尿道の痛み・違和感

蒸散した前立腺部尿道の疼痛や留置カテーテルによる尿道や会陰部の違和感・疼痛を感じることがあります。鎮痛剤などで対応します。

尿路感染症

稀に前立腺炎、膀胱炎などの細菌感染症が起きることがあります。治療の際には抗生物質の投与を行います。

肉眼的血尿

蒸散した前立腺創部や尿道から出血し血尿が出現することがあります。止血剤の内服などで対応可能なことがほとんどですが、稀に麻酔をかけ止血術が必要になる場合があります。

排尿困難

排尿困難の原因が前立腺だけでなく膀胱の機能低下にもある場合には、症状が改善しにくいことが予想されます。

性機能障害
性機能への影響が少ない治療法ですが術前と全く同じ状態が維持されるかは個人差があります。精液量が減る可能性があります。
しばらくの間、精液に血液が混じることがありますが異常ではありません。
数ヶ月から1年以上たってから尿道が狭くなることがあります。

治療の適応

従来の前立腺肥大症手術治療と比較し合併症が少なく安全性が高い治療です。
ThuVAPによる治療に適応する前立腺の大きさは30~80mL程度とされていますが、大きな前立腺(100ml以上)にも十分対応可能です。

低侵襲で有効性の高い前立腺肥大症治療です。手術適応や治療方針につきましては、患者様と十分に相談したうえで、決めていきますので、お気軽にご相談ください。

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