脳神経外科(脊椎脊髄センター)
特色
脳神経外科は、中枢神経である脳と脊髄、さらにその中枢神経に繋がっている末梢神経に関わる疾患を治療対象とします。英語圏で脳神経外科に相当する診療科はneurosurgeryであり、直訳すると神経外科となります。日本に開設されるにあたり精神神経科と混同されるとの考えから、脳神経外科と命名され今日に至っています。一般的に我が国では脳のみを対象とする様なイメージがありますが、諸外国では脊髄や末梢神経に関わる脊椎脊髄疾患の診療実績が、その7割にのぼるとされています。
当院では脳卒中や頭部外傷のみならず、高齢化社会で増加する一方の脊椎脊髄疾患の治療に注力し、これに起因する手足の痛みや痺れ、さらに麻痺に対応した治療を行なっていきます。従来日本では整形外科が主体となって治療してきた分野ですが、現在その専門医制度は、整形外科と脳神経外科両方から同一ライセンスを取得する様になっております。
医師紹介
脳神経外科 部長
岩月 幸一
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出身大学 徳島大学医学部(昭和63年卒業) 専門 脳神経外科
脊椎脊髄外科資格・認定医 日本脳神経外科学会専門医、指導医
脊椎脊髄外科認定医
日本脊髄外科学会指導医
医学博士
脳神経外科 医長
大西 諭一郎 脊椎脊髄センター長
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出身大学 大阪大学医学部 職歴 大阪大学医学部附属病院
関西ろうさい病院
社会保険紀南病院
阪和記念病院
大阪大学医学部附属病院 脳神経外科 助教
Instituto delle Scienze Neurologiche di Bologna, Italy clinical fellow
大阪大学医学部附属病院 脊椎脊髄グループリーダー専門 脳神経外科
脊髄脊椎外科
頭蓋底外科資格・認定医 医学博士(大阪大学)
日本脳神経外科学会専門医・指導医
日本脊髄外科学会認定医・指導医
日本脊髄外科学会・日本脊椎脊髄病学会認定 脊椎脊髄外科専門医
緩和ケア研修修了
臨床研修指導医
日本脊髄外科学会代議員
近畿脊髄外科研究会評議員
日本医師会認定産業医
A型ボツリヌス毒素製剤ボトックス講習・実技セミナー修了所属学会 日本脳神経外科学会
日本神経科学会
日本脊髄外科学会
日本骨粗鬆学会
近畿脊髄外科研究会
日本脳神経外傷学会
日本脊髄障害医学会
日本脊椎・脊髄神経手術手技学会
日本頭蓋底外科学会受賞 日本脳神経外傷学会 平川賞
脳神経外科 医長
森脇 崇
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出身大学 香川大学医学部
大阪大学大学院医学系研究科職歴 大阪労災病院
大阪大学医学部附属病院
大阪大学医学部附属病院未来医療開発部プロジェクトマネージャー
河内総合病院脳神経外科 脊椎脊髄外科 副部長
大阪大学国際医工情報センター 招へい教員
若草第一病院脊椎脊髄神経外科 部長専門 脊髄脊椎外科
成人脊柱変形(腰曲がり症)
低侵襲脊椎前方側方進入手術資格・認定医 医学博士(大阪大学)
日本脊髄外科学会・日本脊椎脊髄病学会認定 脊椎脊髄外科専門医
日本脊髄外科学会認定医・指導医
日本脳神経外科学会専門医
頸椎人工椎間板置換術実施医
日本再生医療学会認定医
日本医事法学会 学術委員
近畿脊髄外科研究会 学術評議員所属学会 日本脊椎・脊髄神経手術手技学会(JPSTSS)
日本脊椎前方側方進入手術学会(JALAS)
日本成人脊柱変形学会
日本脊髄外科学会
日本脳神経外科学会
日本脳神経外傷学会
日本再生医療学会
日本医事法学会
近畿脊髄外科研究会受賞 ・日本脊椎・脊髄神経手術手技学会Best Presentation賞(優秀賞)2019
「鋭的剥離による頸椎前方固定術アプローチ方法」
・第83回近畿脊髄外科研究会 優秀演題 2021年
「前側方椎体置換術(LCR)およびLLIFにより骨卒中を乗り越えた一症例」関連リンク 関節が痛い
脳神経外科 医員
藤原 翔
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出身大学 大阪大学医学部 職歴 大阪労災病院
医誠会病院
大阪脳神経外科病院
大手前病院
大阪大学医学部付属病院
河内総合病院
大阪大学脳神経外科特任研究員専門 脳神経外科
脊髄脊椎外科資格・認定医 日本脳神経外科学会専門医・指導医
日本脊髄外科学会認定医
日本脊髄外科学会・日本脊椎脊髄病学会認定 脊椎脊髄外科専門医所属学会 日本脳神経外科学会
日本脊髄外科学会
North American Spine Society
日本脊椎・脊髄神経手術手技学会
日本骨粗鬆症学会
日本脊髄障害医学会
1.脊髄腫瘍
根治性と神経機能の温存を第一に考え、術中神経モニタリングを行い、病態に合わせた治療を行っています。病理診断によっては、放射線治療や化学療法を行います。
対象疾患:上衣腫、星細胞腫、髄膜腫、神経鞘腫、血管芽腫、脊索腫
上衣腫摘出術(全摘出)
星細胞腫摘出術(全摘出)
血管芽腫摘出術(全摘出)
馬尾神経鞘腫 (片側椎弓切除による全摘出)
2.脊髄血管障害
脊髄の血液循環障害、出血や圧迫により症状が出現します。治療は血管内手術と外科手術があり、適宜最適な方法を行っています。
対象疾患:海綿状血管腫、硬膜動静脈瘻、辺縁部動静脈瘻、動静脈奇形
海面状血管腫 (全摘出)
硬膜動静脈瘻遮断術
術前
術後
脊髄動静脈奇形摘出術(全摘出)
3.頭蓋頚椎移行部病変
頭蓋頚椎移行部は、頭蓋底から上位頚椎、副咽頭間隙に及びます。 重要な神経・血管が存在し、多様な筋・靭帯・関節構造が協調して繊細・複雑な頭部運動を可能にしています。360度のアプローチからの顕微鏡・内視鏡手術とインストルメンテーション手術を行っています。
対象疾患:キアリ奇形(脊髄空洞症)、頭蓋底陥入症、大孔部髄膜腫、神経鞘腫、歯突起骨折、環軸椎亜脱臼、歯突起後面偽腫瘍
大孔部髄膜腫摘出術(全摘出)
迷走神経鞘腫摘出術(被膜内全摘出)
キアリ奇形・脊髄空洞症に対する大孔部減圧術
多発性骨髄腫に対する後頭骨頸椎固定術
頭蓋底陥入症に対する歯突起切除術と後頭骨頚椎固定術
4.脊椎変性疾患
椎間板の変性、椎体と関節の変形、靭帯の肥厚などが生じ、脊髄あるいは神経根を圧迫し、症状が出現します。保存的加療で日常生活が制限されるようであれば外科治療を検討します。術前シュミュレーションによる正確なインストルメントの設置を計画し、手術侵襲の低減と手術時間の短縮をはかっています。手術方法は、後方からの低侵襲な方法(Mini-Open PLIF)から、新しい腰椎前側方の低侵襲な方法(OLIF)を症例に合わせて実施しております。
対象疾患:椎間板ヘルニア、靭帯骨化症、脊柱管狭窄症、分離すべり症、変性すべり症、変形性脊椎症
腰椎後方椎体間固定術(Mini-Open PLIF(低侵襲))
腰椎前方後方同時固定術(OLIF)
5.靱帯骨化症
後縦靭帯骨化症(OPLL):脊椎のうち、胸椎部分の椎体骨の背側に支えとして縦に走っている後縦靭帯が、代謝異常や加齢などにより骨化し、肥大化してしまい胸髄神経を圧迫する病気です。とくに、神経症状を有し、くちばし状に脊髄神経を圧迫する状態(Beak-type OPLL)では、手術加療(前後方からの 神経除圧術+広範囲後方固定術)が推奨されます。
顕微鏡下胸骨縦割式胸椎前方除圧術
6.骨粗鬆症性椎体骨折
転倒・転落などでおきますが、骨が骨粗鬆症でもろくなっている場合には知らないうちに脊椎が潰れてくる場合もあります。椎体骨折は、潰れた椎体骨がかたまれば(安定化すれば)数週~数か月月程度で、痛みは改善いたします。しかし、不整に変形した状態で固まると背中が丸くなる原因にもなります(後弯変形)。 また、潰れた脊椎椎体骨が固まらない(骨癒合しない;偽関節化)場合には痛みが残存し、日常生活にも影響します。さらに、変形が高度となり、脊椎全体が不整な状態(脊柱変形)となる場合もあります。脊椎の変形(成人脊柱変形、変性側弯症)や、偽関節化がひどくなると、脊髄神経へも影響が出現し、下肢の運動麻痺や、歩行困難、慢性腰痛症を生じる場合があります。
脊椎圧迫骨折に対する経皮的椎体形成術(BKP; Balloon Kyphoplasty)
脊椎圧迫骨折(急性期~亜急性期);脊椎椎体骨折のうち、比較的受傷早期で骨折椎体の不安定性による腰背部痛が高度な場合に、骨折した椎体骨内部に人工骨を充填し安定化をはかることで疼痛が改善します。(術式;経皮的椎体形成術(BKP; Balloon Kyphoplasty))。
脊椎骨折後に神経障害が出現した状態および手術で回復した症例
脊椎破裂骨折、椎体骨折後の偽関節;脊椎椎体骨折のうち、骨折の程度は高度な場合や、骨折椎体の安定化が得られない状態 となると、脊椎椎体骨が不安定であり、歩行困難や腰痛、下肢痛の要因となることがあります。高度な脊椎椎体の不安定性に対しては、脊椎の前後方からの安定化を得るための脊椎再建術(手術; 顕微鏡下胸腰椎低侵襲前方椎体置換術(Microscopic minimally invasive LCR) )を行います。
7.腰部脊柱管狭窄症、腰椎変性すべり症
脊椎の加齢的変化などにより脊柱管が狭い状態となり、下肢のしびれや痛み、間欠性跛行(歩くと下肢の痛みが強くなり、すこり前かがみになったりすると軽減する)が出現する腰部脊柱管狭窄症や、椎間板などの変性により腰椎間にずれが生じて、足ったり歩いたりすると臀部や下肢が痛くなり歩けなくなることがあります。過去に腰椎の後方からの手術を受けているかどうかも考慮し、前後方から手術(腰椎前方後方同時固定術(OLIF))をすることもあります。
8.頸椎椎間板ヘルニア
頸椎は7つの椎体骨から構成され、回旋や前後屈、ねじれ運動を可能にしています。第2から7頸椎の各間には椎間板が存在し、左記のさまざまな動きや頸部の安定に関与しています。椎間板には髄核というゲル状の組織があり、その周りに繊維輪という支える組織があります。
その椎間板に何らかの要因で損傷が加わり、損傷した繊維輪の隙間から髄核が出てくることで脊髄神経を圧迫することで、神経症状(脊髄症状や神経根症)が出現します。
神経症状(脊髄症状や神経根症)が高度であり、痛みや上肢の筋力低下、歩行障害が出現している場合で、原因である頸椎の前方からの手術法が望ましい場合には、手術(頸椎前方固定術(microscopic ACDF(椎間固定術),ACCF(椎体間固定術)、頸椎人工椎間板))を行います。
9.頸椎後縦靭帯骨化症(OPLL)、変形性頚椎症
頸椎椎体骨の背側(うしろ)を上下に連結し、縦に走る後縦靭帯が骨または骨化してしまった結果、脊髄神経が通る脊柱管が狭くなり、脊髄や神経根が押されて、感覚障害や運動障害等の神経症状を引き起こす病気です。また、加齢的変化による靱帯、関節、骨の変性により、同様の状態となることもあります。
比較的広範囲におよぶ場合に、頸椎の後方からの神経除圧術(顕微鏡下頸椎椎弓形成術)を行います。
10.成人脊柱変形(腰曲がり症)
骨粗鬆症性の椎体骨折後の後弯変形や、変性側弯症、変性後側弯症、および医原性の後弯症(固定術後や除圧術後の変形)などにより、大人になってから発症する脊椎全体(脊柱)の変形、ねじれが生じ、腰背部の痛み、直立での歩行困難や良好な姿勢保持が困難、また、せぼねの変形によって腹部が圧迫を受けることでの逆流性食道炎などによる消化器症状 などを認めます。日常生活への影響が高度な場合には、せぼねの矯正固定により、望ましいバランスの脊椎へ戻す手術(脊椎前方後方矯正固定術)も検討します。
脊椎(せぼね)の変形により立位が困難な状態
手術により、理想的な脊椎(せぼね)のバランスを取り戻した状態